ペットフード安全法の制定

現在日本には、ペットフードの安全性を守るための法律があるのを知っていますか?

「愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律」という法律です。

一般的には「ペットフード安全法」と呼ばれています。

少し古いネットの情報や書籍では日本にはペットフードに関する法律がない、だからペットフードは危ない、という論理が一部にあったようです。

ペットフード安全法が制定されたのは平成20年(2008年)6月、そして翌年の平成21年(2009年)6月1日に施行されました。

従って、ペットフード安全法が施行されてから、すでに10年近くが経過していることになります。

この法律があるからペットフードは安全だ、とは言い切れないかもしれません。

でも、この法律によってペットフードに一定の安全性が確保されたのは確かだと思われます。

とは言っても、犬や猫がペットフードを生涯食べ続けることを考えると、この法律で決められた有害物質の許容範囲に問題があるのではないか、という行けもあるようです。

それは、規制の値自体が、人間に対する規制よりも緩い部分があることによります。

でも、少なくともこの法律が出来たことで、ペットフードのメーカーや販売会社の意識も、少しは変わってくれていると信じたいと思います。

ペットフード安全法が制定された背景となる事件

なぜそれまでペットフードの安全を守るための法律がなかったのか、という疑問もありますが、そこは置いておいて、なぜこの法律が出来たのか、という点についてはどうでしょうか。

実は、この法律はある事件がきっかけとなり、作られたのです。

日本では実質的な被害がほとんどなかったようなので、そのためかそれほど大きくニュースとして扱われなかったように思いますが、世界的に多くの犬や猫が被害にあった大事件だったのです。

その事件が発覚したのは2007年3月17日、カナダにある大手のペットフード製造会社メニューフーズ社が、同社が製造したペットフードをリコーすると発表したことから、この事件が世に知れ渡るようになりました。

もちろん、この事件の実際はもっと前から始まっていたことになります。

メニューフーズ社がペットフードのリコールを行う理由、それは同社製のペットフードを食べた犬や猫の腎不全が相次いで報告され、約10頭が死亡した、というものです。

それを受けて、同社は前年2006年12月3日から2007年3月6日までに出荷されたペットフードを全て(犬用フードが50品目、猫用フードが40品目)を全てリコールすると発表したのでした。

しかし、実際の犬や猫の被害はその発表の数字とはまさに桁外れに違う、とんでもない数字でした。

このペットフードを食べて亡くなった犬や猫は、確認されただけでも数千頭、世界規模では実に数万頭が被害にあったのではないか、と言われています。

リコールの対象となったのも、北米、ヨーロッパ、南アフリカなど世界規模に及ぶものでした。

日本には輸入代理店の正規品には該当する製品はなかったようですが、並行輸入で入っていたものはあったようでそれも回収の対象になったようです。

しかし、幸い日本では実質的な被害はなかったとされています。

でもなぜ世界的に被害を及ぼすような事件が起きたのか

被害を発生させたペットフードの製造元はメニューフーズ社1社だけです。

なのになぜこんな世界的に被害が広がる事件になったのでしょうか。

メニューフーズ社と言っても一般の人にはあまりなじみのないペットフードメーカーだと思います。

これは、日本のみならず、欧米でもそうでしょう。

でもこのメニューフーズ社というのは、主要ブランドを含む多くのペットフードブランドのペットフードを製造していたいわゆるOEMメーカー(取引先ブランドの製品を作る会社)だったのです。

取引先のペットフードブランドは数十社、そこに含まれるブランドのペットフードは世界的に販売されていたため、その被害も世界中にまたいで発生してしまったのです。

日本でも有名なメーカーのほとんどがその中に含まれていましたが、幸い日本で正規に販売されている種類は対象となっていなかったのです。

ただし、一部並行輸入で入っていたペットフードに対象となるペットフードも入っていたようですが被害が出る前に回収されたようです。

原因はなんだったのか?

では、そんなに多くの犬や猫を死に至り締めた原因は何だったのか?

調査の中ではいくつか原因の可能性となる物質が見つかったようですが、最終的に最も有力視されたのが、メラミンでした。

メラミンとは有機化合物でメラミン樹脂の主原料となる物質です。

通常食品に使われることはない物質とのことなのです。

そんなメラミンがなぜペットフードに混入していたのか?

メニューフーズ社はペットフードの原料の一部を中国から輸入していたのです。

その中国から輸入した原料の中の小麦グルテンとライスプロテインの中にメラミンが混入していたとのことでした。

通常使用されるはずのないメラミンがなぜ混入していたのか?

実はこのメラミンは、作業の手違いや間違いで混入されたものではなく、中国の原材料メーカーが意図的に混入していたことが調査の結果わかったのです。

メラミンを意図的に混入した理由は、小麦グルテンの見せかけ上のタンパク質含有量を多く見せるためだったといわれています。

一般的に食品中のたんぱく質の含量は、その食品に含まれる窒素の量を測定して求めるようです。メラミンは窒素を多く含むことから、メラミンを混合することで、たんぱく質の含量を実際より多く見せかけることが出来るのです。

その結果、メラミンが混入されたペットフードを食べた数千、数万に及ぶとも言われる犬や猫が肝臓障害、腎臓障害によって死亡するという悲劇が起こってしまったのです。

中国の食品管理の実態に関しては、人間用のものでも問題が多発していました。

しかし、最近はそういった中国での食品に関する問題はあまり聞かなくなったようにも思います。

こういった事件を契機に改善されているのでしょうか。

そうであることを期待したいと思います。

いまや、食品に限らず、中国は日本にとって重要な物資供給国になっているのは、事実だと思うので。

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