ミニチュアダックスフンドの歴史

ダックスフンドもともとはスタンダードサイズのスムースコート

現在ダックスフンドと言えば、ミニチュアダックスフンドのことを言っているのがごく普通ですが、このミニチュアサイズも、愛玩犬として抱きやすく、ということではなく、あくまでも猟犬として改良されてきたものなのです。

もともとアナグマを獲ることを目的としていたものを、より小さいウサギなどの小動物を獲るために、もともとはスタンダードサイズのダックスフンドを小型化して、ミニチュアダックスフンドが作られたのです。

ダックスフンドという名前はもともとドイツ語です。ダックスは“アナグマ”、そしてフンド(ドイツ語読みではフント)は“犬”、つまりアナグマを獲るための犬、アナグマ狩りの猟犬ということなのです。

このもともとのダックスフンドを小型化したのがミニチュアダックスフンド、さらにミニチュアよりも小さいサイズに作られたのがカニヘンダックスフンドです。

この“カニヘン”はもともとドイツ語で“ウサギ“という言葉とのことなのです。

ダックスフンドのミニチュア化に際しては、他の犬種との交雑によって改良されていますが、その犬種も歴史の中で決められていくことになりました。

また、現在ミニチュアダックスフンドと言えば、多くはロングコートです。

しかし、もともとはスムースコートで、スムースから他の犬種との交雑によって、ロングコート、そしてワイヤードコートのダックスフンドが作られてきました。

ミニチュアダックスフンドの場合、特にこの歴史的な流れ、背景を知ることにより、ミニチュアダックスフンドのことがより理解できるようになるかと思います。

ダックスフンドは4千年の歴史?

ダックスフンドの祖先に関しては、最も古い時代のものは、4千年前のエジプトに遡るという説があります。

その根拠となっているのは、古代エジプトのトトメス3世の壁画です。

胴長短足の犬が描かれているので、この犬がダックスフンドの祖先犬ではないかという説です。

また、その根拠は単に壁画の犬だけでなく、その壁画の中に “tekal” または “tekar”と読めるような文字が刻まれているとのことで、これはドイツ語でダックスフンドの別の呼び方でもある”Teckel”につながっているのではないか、というものです。

確かに、スフィンクスの壁画の中にも、胴長で短足のダックスフンドを思わせるような体型をしたスフィンクスも描かれているものがあります。

古代エジプトの時代に、ダックスフンドのような胴長で、足の短い犬がいたとしても、不思議ではありません。

現在のダックスフンドとの直接的なかかわりは、100%推測の域を出ることはありませんが、その犬の血が今のダックスフンドにも流れていると考えるのは決して無理な話ではないように思います。

ただし、前述のダックスフンドのドイツでの別名”Teckel”と、古代エジプトの壁画にでてくる”tekal” または “tekar”と読めるような文字については、ドイツ語のダックスフンドの名前の変遷から、全く関連がないというのが、現在の見方であるようです。

ダックスフンドの直系祖先は12世紀ごろから

古代エジプトの胴長短足の犬と現在のダックスフンドとの関係は、あくまでも形が似ているとの事からの推測、想像の域を出ませんが、直接的に現在のダックスフンドと関わる記録が出てくるのは、12世紀頃といわれています。

12世紀頃にスイスのジェラという山岳地方にいたジェラ・ハウンド、つまりジェラ地方にいた狩猟犬ということになると思いますが、この犬がダックスフンドの直径の祖先だと考えられているようです。

この犬とドイツやオーストリアの山岳地帯にいたと言われる中型犬のピンシェル、つまりドーベルマンやミニピンの祖先犬のような犬、との交配によって現在のダックスフンドの大元となる犬種が出来たといわれています。

ただし、当時はスムースヘアで体も10~20kgということです。

この犬がドイツで狩猟犬として活躍していくことから、ドイツを原産地として、現在のダックスフンドへと改良がされてきました。

確かに、ダックスフンドの顔と、断耳していないドーベルマン本来の顔はよく似ているといつも思っていました。なんとなく、納得してしまいます。

その後、現在主流となるミニチュアダックスフンドにいたるまでには、いろいろな犬種との交配が行われてきたということで、それが現在のダックスフンドのあまりにも多種多様な毛色、毛質になっているようです。

ロングとワイヤー、そしてミニチュア化

なぜロングやワイヤーという毛質のダックスフンドが作られてきたのかについては、まだ調べ切れていません。個人的な推測としては、いろいろと交雑している中で、ロングやワイヤーのダックスフンドも生まれてきて、毛の長いこと、特に剛毛のワイヤーヘアーは顔や体を守るのに適していて、狭い穴に入る時に体を守る役割があり、あくまでも猟犬としての機能的な目的だったのではないかと思います。

ただし、それぞれの種類のダックスフンドは、当時はそれぞれの土地で、その地域の天候や地形などに適合するように他の犬種との交雑により、改良さてていったようで、現在のように画一的なダックスフンドとしての特徴を有していないこともあったようです。

共通するのは、全ての改良は猟犬としての能力をよりよく発揮するためということで、タフで頑強であることは当時の全てのダックスフンドに共通する点だったようです。

また、その頃のダックスフンドは、スムース、そしてロングもワイヤーも大きさは現在のスタンダードサイズでした。

もともとスタンダードサイズだったダックスフンドですが、今の主流はミニチュアサイズです。このミニチュアサイズへの改良は19世紀ごろと言われています。

目的は、本来アナグマ猟を目的とした猟犬だったダックスフンドをより小型の動物、例えばウサギなどにも使うことを目的として、より小さい穴へも入りやすくするために体の小型化が行われてきました。

この点は、やはり小型化されてきたプードルとは全く違う経過をたどっています。もともと猟犬だったことは同じですが、プードルの場合は、フランス貴婦人の抱き犬としてより小型化されてきたのに対して、ダックスフンドはあくまでも、猟と言う仕事を目的に小型化がされてきました。

この点は、フランス原産のトイプードルと、ドイツ原産のミニチュアダックスフンドという、それぞれの原産国のお国柄もよく反映しているように思います。

さて、このようにダックスフンドの場合は、より小型の動物の猟という仕事のために、ダックスフンド自体の小型化が行われてきたわけですが、当初はたまたま生まれてきた小型のダックスフンドを使ったり、小型のピンシャーなどとの交配によって、小型のダックスフンドを作っていたようです。

つまりそれぞれの地域で、小動物の猟を目的とした機能面だけを追及した改良が行われたわけです。

そのため、結果として本来のダックスフンドの特徴から外れるものも多かったようなのです。

ダックスフンドの改良規定の制定

このようにミニチュア化に際して、本来のダックスフンドの特徴から逸脱した犬も多くなってきたことから、1910年にダックスフンドの品種改良に関しての基準がしっかりと設けられたとのことなのです。

この基準では、それぞれの毛質での交配する犬種が決められているのです。

スムースはミニチュアピンシャー、ロングはパピヨン、そしてワイヤーはミニチュアシュナイザーです。

つまり、現在のダックスフンドは、スムースであればミニピン、ロングであればパピヨン、ワイヤーはミニチュアシュナウザーの血が大きく関与しているということになるのですね。

しかし、それまでにはいろいろな犬種との交配が繰り返されていたものと思われ、それが現在の非常に多種多様な毛色として繁栄されているのでしょう。

また、また現在でも猟犬としての気質を持ちながらも、性格的にはいろいろなタイプがいるのも、こうした歴史的な背景が影響しているのでしょう。

このカニーンヘンというのは、ドイツ語でウサギという意味です。

つまりウサギを獲ることを目的として出来てきたサイズということなのでしょうね。

今でこそ、愛玩犬として人気のミニチュアダックスフンドですが、現在でもドイツでは、ダックスフンドが猟犬として活躍しているようです。

また現在ミニチュアよりも小さいサイズのダックスフンドにカニーンヘンというサイズがあります。

このカニーンヘンというのは、ドイツ語でウサギという意味です。つまりウサギを獲ることを目的として出来てきたサイズということなのでしょう。

ミニチュアダックスフンドの場合、吠えるという問題行動が特に多いのですが、猟犬としての歴史的な背景を考えると、吠えると言うのも、ダックスフンドにとっては猟犬としての重要な仕事のひとつであり、吠えるように改良されてきたという経緯もあるのかもしれませんね。

不動の人気をもつ愛玩犬に

このように猟犬として改良され、小型化されてきたダックスフンドですが、今では不動の人気を持つ愛玩犬となっています。

ドイツでは、ダックスフンドの最も古いクラブであるドイツテッケルクラブ(Deutscher Teckelklub)で繁殖の努力がなされ、アメリカへ渡ったのは、19世紀後半といわれており、AKC(アメリカン・ケンネル・クラブ)に犬種として公認されたのが、1935年です。

ダックスフンドが日本へ渡ってきたのは、明治時代といわれていますが、実際に人気を博すように成ってきたのは、1955年に日本ダックスフンド倶楽部が設立されてからです。

そして一時期は人気No.1の犬種として、JKCとして記録の残っているものでは、1999年から2007年まで、日本国内での登録頭数No.1という記録を持っています。

一時の異常なまでの人気は落ち着いてきたものの、それでも、その後も登録頭数では第3位の位置を守っています。まさに、現代の人気犬種の代表格といってよいでしょう。

ただし、人気犬種ゆえの乱繁殖による問題も多く指摘されています。

また、もともと根っからの猟犬とはいえ、現在、少なくともこの日本では、猟犬としてミニチュアダックスフンドを飼う方はほとんどいないと思います。

あくまでも家庭犬として迎える犬種なので、犬の持っている気性、血統、性格はあくまでも家庭犬にふさわしいものである必要があります。そのためには、やはり繁殖しているブリーダーがとても重要な役割を果たしています。

逆の言えば、人気犬種だからこそ、しっかりとしたブリーダーから迎えたい犬種でもあります。

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