ペットショップでブリーダーの犬が販売できない
ペットショップには商業目的で繁殖された犬、つまりいわゆるブリーダーが繁殖した犬は置けない、つまり売れない、という法律があるのをご存知でしょうか。
この法律によれば、ペットショップに置ける犬は、動物保護団体などによって保護された犬だけ、になるのです。
つまり、ペットショップはブリーダーから仕入れた子犬を売るところではなく、保護された犬たちの里親を探すところ、になるのです。
と、言っても、これは日本の話ではありません。
アメリカのカリフォルニア州で州法として2017年の10月に成立した法律です。
施行されるのは2019年1月1日からです。
従って、カリフォルニア州では、2019年からペットショップではブリーダーが商業目的で繁殖した子犬は販売することが出来なくなる、ということです。
ただし、ブリーダーはブリーダー自身が直接、顧客に犬を販売することは出来ます。ただし、その場合も両親となる犬が実際に確認できるなど、条件があるようです。
従って、まともなブリーダーは個人での犬を販売することは出来るのですが、いわゆるパピーミル(子犬工場)的なブリーダーは犬を販売することは出来なくなるでしょう。
ただし生後8週間までの子犬は一切販売が出来ません。日本で骨抜きにされた8週齢規制とは全く違い、厳格に運用されるようです。
対象となる動物は犬だけでなく、猫、ウサギもその対象になります。
また、オーストラリアのヴィクトリア州でも同様の法律が2017年12月に成立、こちらは2018年7月からの施行となるようです。
ヴィクトリア州では、さらにブリーダーが飼育できる雌犬の頭数制限も2020年から施行されるようで、その法律が施行されれば、一般的なブリーダーが持てる雌犬は10頭までに制限され、特別な条件を満たしたブリーダーでも、50頭までに制限されるようです。
これらの法律は、今日本でも問題になっている、パピーミル(子犬工場)の撲滅、そして保護された犬の殺処分の問題を解決ための手段としてアメリカでも始めて州の法律として成立したものです。
つまり、パピーミルや保護犬の問題は、今や世界的な問題になっている、ということですね。
犬を飼いたい人はどうするのか
でも犬を飼いたい人にとっては、ある意味では不便になってしまいます。
自分が欲しい犬種の子犬をペットショップでは簡単に見つけることが出来なくなってしまうでしょうからね。
犬を飼いたい人の選択肢としては、ペットショップにいる保護犬から選ぶ、また特定の犬種の子犬を飼いたい人は、その犬種のブリーダーを探し、直接ブリーダーのところへ行く、という2つの方法になってしまいます。
でも、これもひとつの狙いではないでしょうか。
安易な気持ちで犬を飼う人が少なくなる
犬の問題での、保護犬の問題に関しては、犬を飼う人の問題だからです。
ペットショップでお金さえ出せば、誰でも簡単に犬が買えてしまう、衝動買いも出来てしまう、ということは、少なくともなくなるでしょう。
特定の犬種を飼いたい人は、ブリーダーを探しそこに出向いていかなければなりません。
安易な気持ちで犬を飼おうという人は少なくなるということが期待できるでしょう。
保護犬が再びどこかの家族に迎えられる確率が高くなる
また特に犬種にこだわらない人は、保護犬を迎えることが多くなるのではないでしょうか。
そして、そんな保護犬でも問題なく迎えられる人が、犬を飼うことが多くなることが期待できます。
それによって、保護犬がもう一度、どこかの家庭に、家族の一員として迎えられる可能性が格段に高くなることも期待できるかもしれません。
そして、そんな保護犬を迎える人は、その犬をまた保護犬にさせるようなことは少ないのではないか、ということも期待できます。
でも、当然反対する勢力もある
このように、動物愛護という観点からはとても素晴らしい、と歓迎される法律ですが、当然のことながらこれに反対する勢力もあるでしょう。
既存のペットショップは、大きな経営的な打撃を受ける可能性があります。
また、ブリーダーも販売経路が狭くなることになります。
もちろん、ペットショップやブリーダーの中にも、この法律を歓迎して、逆に経営面にプラスにするお店やブリーダーもいると思います。
でも、中には反対するお店やブリーダーもいるでしょう。
また、アメリカで最も大きな血統書発行団体であるアメリカンケネルクラブも、この法律に反対の意思を示しているようです。
こういった業界や団体の力は決して小さなものではないと想像できます。
そういう意味では、カリフォルニア州はその力に屈せずにこの法律を成立させたということで称賛されることだと思います。
でも逆に言えば、アメリカでさえ、それを実行できたのはこのカリフォルニア州が初めてであり、まだほかの州では成立できない、ということになります。
こういった、業界を敵に回すような法律を成立させることは、極めて難しいというのが現実なのでしょうね。
日本では、当分無理だろうな・・・
最近、日本でも保護された動物の殺処分の問題、また最近ではパピーミル(子犬工場)の問題がニュースでも取り上げられるようになってきました。
国民的な意識としては、こういった問題を改善するべきという方向に向いているように感じます。
しかし、動物愛護法などの法律は必ずしもそうではないように個人的には感じています。
国としては、子犬の8週齢規制や、販売時の現物確認、対面販売、などで規制している、という立場のようですが、むしろそれらは実質的には、保護犬やパピーミルの問題に逆行しているのではないかと思います。
子犬の8週齢規制とは、生後8週齢、つまり56日までは販売のための引き渡しや展示を禁止する、という法律です。日本でもやっとこのレベルになってきたかと思いきや、その後に次のような但し書きが付くのです。
”なお、「56日」について、施行後3年間は「45日」と、その後別に法律で定める日までの間は「49日」と読み替える”
つまり、実際には現在も8週には届いていないのです。それが骨抜きという意味です。
また、犬を販売するときのは、実質的にネットでの犬の販売を制限することになりました。
ネットでの販売制限はいいだろう、と思う方もいるかもしれませんが、これはいわゆるブリーダー直販、つまり犬を飼いたい人がブリーダーから直接犬を迎える手段を減らしてしまっています。
その結果、今まで子犬のブリーダー直販を行っていたブリーダーが、子犬を市場に出すようになり、同時に店頭販売のペットショップが販売では有利になったため市場での犬の価格も上昇う、その結果、ペットショップでの子犬の販売価格は高騰と言ってもいいような価格、具体的には1頭の子犬の価格が数十万円から百万円前後というような価格が平気で付けられています。
最近、犬を飼う人が減っているのも、単に猫が人気なだけでなく、子犬の価格の異常な高騰も大きな要因になっているのではないでしょうか。
逆に、地方のブリーダーの中には、現物確認、対面販売の規制によって、ブリーダー直販が出来なくなったことによって、やむなくブリーダーを廃業したまともなブリーダーもたくさんいるようです。
つまり、日本では、動物愛護法の改正によって、リーズナブルに手に入るまともなブリーダーの子犬が手に入りにくくなり、異常に高騰した店頭販売のペットショップの子犬を買える人だけが犬を飼える、という状況になっていると思われます。
だったら逆に、犬を飼いたい人は保護犬を里親として飼うようになるのではないか、という意見もあるかもしれません。
でも、実際に保護犬を里親として迎えようと思うと、けっこうハードルが高いのが現状だと思います。
そういった里親を募集している団体を探し、コンタクトして、されにその団体によっては里親として迎えようとする人の審査があり、それがかなり厳しい場合もあるのです。
したがって、保護犬のは十家探しという点に関しては、もっと里親を探しやすい環境と、里親として保護犬を迎えやすい環境が必要だと感じます。
そういう意味では、既存のペットショップを保護犬との出会いの場所とする冒頭で紹介したアメリカのカリフォルニア州やオーストラリアのヴィクトリア州の法律は保護犬を減少させる目的としてかなり期待できるのではないかと思います。
日本でも早く、そんな法律が・・・、と期待したいところですが、まず当分は無理でしょう。
アメリカやオーストラリアでさえ、やっと一つの州がそういった法律を成立できた、という段階です。
おそらくは何らかの圧力で改悪されたであろう動物愛護法を見てもわかるように、そんな日本で、こんな既存の店頭販売をしているペットショップを窮地に追い込むような法律が成立することは、当分はないでしょう。
もし、それが出来るとしたら、相当な世論の勢いが必要ではないでしょうか。
もちろん、そういうことを訴える人や、推進している人はたくさんいると思い、その人たちを支持したいと思います。
しかし、日本全体としてみれば、それはほんの一部の人でしょう。
でも、前述の通り、最近日本でも、保護された動物の殺処分の問題、またパピーミル=子犬工場の問題が全国的なニュースとして取り上げられるようになってきました。
この流れが、もっと強くなってくれば、とわずかですが、期待していきたいと思います。
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