犬の避妊手術とは?

犬の避妊手術には2つの方法があります。

  1. 卵巣だけを摘出する方法
  2. 卵巣と子宮を摘出する方法

本来、避妊の目的のみであれば卵巣だけを摘出すればいいのですが、日本で一般的に行われているのは、2の卵巣と子宮の両方を摘出する手術のようです。

その理由を簡単人言えば、どうせ開腹手術をするのであれば、将来の病気のリスクを減らすために子宮も取ってしまおう、ということです。

メス犬に多い疾病として子宮蓄膿症という病気があります。子宮蓄膿症とは、子宮内への細菌感染によって子宮内に膿が溜まり、子宮が膨れ上がってしまう病気です。最悪の場合、子宮が破裂して腹膜炎を引き起こし、短時間で死亡してしまうこともある病気です。

したがって、子宮そのものを摘出しておけば、この子宮蓄膿症になることはありません。したがって、避妊手術の際に子宮も取り除いてしまおうという考え方です。

しかし、子宮蓄膿症は卵巣だけ摘出しておけばたとえ子宮が残っていても子宮は常に収縮した状態となっているため、子宮蓄膿症にはならない、という考え方もあるようで、必ずしも子宮の摘出が必要かどうかは、その獣医師の考え方にもよるようです。

避妊手術そのものが、本来健康な犬の体にメスを入れるものです。最小限の摘出ですむのであれば、そのほうがいいように思いますが、もし、避妊手術をされる場合は、複数の獣医師の意見をよく聞いて、飼い主さんが納得できる方法を選ぶのが愛犬のためだと思います。

しかし、このページでは、前回の「犬の去勢手術、あえて必要なのか?」と同じように、あえて健康な犬の体にメスを入れてまで愛犬の避妊手術をする必要があるのか、ということをテーマにして、メス犬を愛犬に持つ飼い主さんの検討の材料にしてもらえれば、と思っています。

犬の避妊手術のメリット

犬の避妊手術には、一般的に次の3つのメリットがあると言われています。

  1. 不要な繁殖を防げる。
  2. 子宮蓄膿症などの生殖器関連の疾患を予防する。
  3. 発情時の問題をなくす。

犬の避妊手術の本来の目的は、メス犬が妊娠できないような体にして、「不要な繁殖を防ぐ」ことにあります。

しかし、オス犬の場合もそうですが、メス犬においても最近はその本来の目的である不要な繁殖を防ぐというよりも、犬の健康を守る、ということが重要視されているようです。

また、メスの場合は、発情時のストレス、発情時の整理による出血などがなくなることも、メリットである、と言われています。

したがって、、ほとんどの犬関連のサイトや書籍では、メス犬は避妊手術をするべきということが書かれているように思います。

そして、避妊手術をする時期は、メス犬の最初の発情が来る前、生後3か月を過ぎたらなるべく早い時期に行うのが良いとも言われています。

しかし、メス犬の避妊手術は一般には簡単な手術と言われていますが、完全な開腹手術となるため、オス犬の手術よりも難易度が高くなることは確かです。しかも、生後3か月過ぎの早い時期に行うことが推奨されているために、まだ子犬の体が未成熟の段階での手術となることから、手術の際の全身麻酔の影響、手術そのもののリスクは、オス犬の去勢手術よりも高くなります。

もともと避妊手術は健康なメス犬の体を開腹手術するものです。それに伴うリスクもあるので、本当に愛犬に避妊手術を行うかどうかは、飼い主となる人間が慎重に検討すべきことだと思います。

実際、以前子犬をお引渡ししたお客様から、生後6か月までに避妊手術をした方がいいと獣医師に強く勧められてその子犬に避妊手術をしたところ、手術の翌日に亡くなってしまったというご連絡を受けたこともあります。その時の飼い主さんの悲しみは犬を飼っている方なら容易に想像がつくでしょう。本来あえてしなくても良い手術をしたがために、まだこれから、という愛犬を失う結果に、自分の判断を後悔しても、しきれないでしょう。

もちろん、避妊手術で失敗するのは稀なのかもしれません。でも、確実に失敗例があり、それによって愛犬の命を失うことが確率は少なくても確実にあるのです。

まずは、本当に愛犬に避妊手術をさせるべきなのかどうか、そこのところを上のメリットと下のリスクを考えて、飼い主さんが決めたげることが必要です。

もちろん、避妊手術をしたことによって高齢になっても健康でいられるワンちゃんもたくさんいるでしょう。

したがって、決して避妊手術をしないことをこのページで推奨しているわけではありません。するという決断もそれはそれでいいと思っています。ただし、飼い主さんがするメリットとすることによるリスク、デメリットをよく承知の上で決めてほしい、単に獣医師に勧められたからする、ということは避けてほしい、と思うのです。

そして、避妊手術をするという決断を下すにしても、どこの病院で行うかは、しっかりと検討されるべきだと思います。

避妊手術のメリットに対する異論、デメリット

では、上の避妊手術をすることのメリットに関して、もう少し詳しく考えて見たいと思います。

不要な繁殖を防げる。

これは、避妊手術をすることによって確実に得られるメリットだと僕たちも思っています。ただし、不要な繁殖を防ぐ、望まない愛犬の妊娠を防ぐ、ということを目的とするならば、必ずしも避妊手術が必要だとも思いません。

去勢手術のページでも書いていますが、要約すると下記のような理由から、今の時代、あえて避妊手術をしなくても不要な繁殖を防ぐことが出来ると考えています。

  1. 犬の飼い方が外飼いから、室内飼いが主流となっている。
  2. 一部の地方を除いては、野良犬はほとんどいない。
  3. 犬を放し飼いにする飼い主は現在ほとんどいない。

このような理由から不要な犬の繁殖、ましてや愛犬の望まない妊娠は飼い主の管理の仕方で確実に防げる時代になっていると思います。

ただし、オスとメスの両方を多頭飼いしている場合は、別です。

この場合は、オス犬を去勢する、またはメス犬を避妊手術することがメリットとなると思います

そして、どちらを選ぶかということになると、メス犬の発情時の問題行動を防ぐという意味からも、メス犬の避妊手術の方がメリットがあると思われます。

子宮蓄膿症などの生殖器関連の疾患を予防する。

これは、確かにその通りだと思います。卵巣、あるいは子宮そのものを取ってしまえば、それに関する病気になる心配はなくなるでしょう。

そして、その目的のためには生後3か月以降、初めての発情になる前にしなければいけない、ということです。

でもまだ未成熟な体に全身麻酔をして開腹手術をすることのリスクと、どちらを選ぶのか、という問題もあります。

例え避妊手術をするにしても、必ずしもその時期がいいと考えている獣医師だけではありません。

この記事の最後に書いてあるように、本来は犬の体が成熟した生後1年以上、大型犬では2年以上経過してから手術をするべきという主張をされる獣医師もいます。

実際に前述した避妊手術によって命を落としてしまった子犬もいる、とう事実もあります。

また、オス犬の場合と同様、本来あるべきものを取り除いてしまうことによって、本来のホルモンバランスを崩してしまうというリスクがあります。

それによって、発生の確率が高くなると言われている病気もあることを忘れてはいけません。

骨肉腫、血管肉腫、甲状腺機能低下症などの疾患は、避妊手術をすることによって発生リスクが高くなると言われています。

また、よく言われるのが避妊手術をすると肥満になりやすくなる、ということです。

人間同様、犬も肥満によって糖尿病になるリスクは高くなり、心臓などへの負担も大きくなることになります。

要するに、避妊手術によって防げる病気もある代わりに、発生リスクの高くなる病気もあることを忘れてはいけないのです。

発情時の問題をなくす。

避妊手術によって、メス犬の発情時の問題の解消になる、これは確かだと思います。

メス犬は発情するとどうしても、オス犬にすり寄っていく犬もいるし、またオス犬も発情した犬に刺激されます。

また整理による出血によって、床や絨毯が汚れることもあるので、それを防ぐことにもなります。

したがって、メス犬の発情時の問題を防ぐ目的では避妊手術は有効だと思います。

特に、オス犬との多頭飼いの場合は、メス犬の避妊手術は有効な手段と言えるかもしれません。

ただし、避妊手術を行うことによるデメリット、リスクというものも、前述の通りあるのです。

避妊手術を行うときの全身麻酔や手術自体のリスク、そして本来のホルモンバランスが崩れることにより疾病発祥のリスクなど。

そこをどう考えるか、ということになります。

ただ、オスとメスの多頭飼いの場合には、メス犬の避妊手術は有効な選択肢の一つになると思います。

犬の避妊手術、するかしないかは飼い主さんの判断です。

繰り返しになってしまいますが、愛犬に避妊手術をするかしないかは、飼い主さんの判断次第です。

犬は自分でそれを決めることはできません。でも、もし犬が自分で決めることができるとしたら、ほとんどの犬は、しないことを選ぶのではないでしょうか。

最近、日本では旧優生保護法によって強制的に避妊手術を受けさせられた方々の問題がニュースになっています。

犬の問題と一緒にしてしまうのは、大変失礼だし、本質は全く違うと思います。

でも、飼い主となる人間は、愛犬の気持ちも良く考えて、どうするのが愛犬にとって一番良いのか、よく検討して決めてあげてほしいと思います。

これは、どちらが正解という問題ではないでしょう。

避妊手術をしてよかった、という犬もたくさにるでしょうし、逆に避妊手術をしなくてよかったという犬も同じようにたくさにるでしょう。その逆もしかりです。

最後に、去勢のページでも書いた、ある獣医師の言葉をこのページでも記しておきます。

とある獣医師の去勢・避妊に関する意見

「去勢や避妊手術をしたからと言って、必ずしもその犬の健康に貢献するわけではない。去勢や避妊手術することによる健康面での悪影響が大きくなる場合も少なくない。リスクが少ないとはいえ手術なので確実にリスクはあるし。ただ、普通の動物病院では去勢・避妊手術はリスクの少ない収入源としてやってほしい手術であることは間違いないだろう。そして、なるべく自分の病院でやってもらうために早期に行うことを勧めているのが実際のところだ。とはいえ、多頭飼いでは、去勢・避妊手術が有効なケースもあるだろう。ただし、実際に手術を行う時期は、本来は生後1年以上、大型犬では生後2年以上経過してから、つまり体がしっかりと成長してから行うべきである。子犬のうちの全身麻酔は、それ自体にリスクがある上に成長過程での手術はより犬の体に悪影響を及ぼすリスクが高くなる。だから、本来は手術をするにしても、犬の体が完全に成犬の体になってからするべきである」

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