犬の去勢手術とは?その目的は?

犬の去勢手術、犬を飼っている方ならほとんどの人が知っていると思いますが、単純にオス犬の睾丸を摘出、取り除いてしまう手術です。

それによって、どんなメリットがあると一般的には言われているのか、一応確認したいと思います。

犬の去勢手術のメリット

オス犬の去勢手術をすることによって、一般的には次の3つのメリットがあると言われています。

  1. 不要な繁殖を防げる。
  2. 精巣腫瘍などの生殖器関連の疾患を予防する。
  3. 攻撃的な行動、マーキングなど犬の問題行動を抑制する。

本来の目的は、オスの生殖機能をなくすことによって、繁殖をさせないようにすることです。

しかし、最近はその本来の目的である不要な繁殖ということよりも、犬の健康維持のため、という目的が強く言われているようです。

また、吠える、噛むなどのの攻撃的な行動を抑制する、同時にそういったことのよってのストレスを軽減させる、ということも言われています。

そういったことから、ほとんどの犬関連のサイトや書籍では、オス犬は去勢手術をするべきということが書かれているように思います。

さらに、去勢手術をする時期は、犬の生殖機能が成熟する前の生後6か月から1歳未満の早い時期、と書かれていることが多く、また動物病院でも早期の去勢手術を進めているところが多いようです。中には、生後3か月を過ぎたら早めに去勢手術をした方が良いと言っている獣医師もいるようです。

犬の去勢、メリットの鵜呑みは危険では?

上記のように、一般的にはオス犬は生後6か月を過ぎたらなるべく早期に去勢手術をするべき、ということが多くのサイトや書籍、また動物病院でも推奨されているのが現実です。しかし、本当にそうなのか、僕たちは少し疑問に感じています。

去勢手術をするかしないかは、あくまでも飼い主となる人が判断するものです。

したがって、去勢手術をするべきではない、ということまで主張するつもりはありません。しかし、上に書いた去勢することによるメリットの2番目と3番目に対しては、必ずしも同感できない、特に3に関してはほとんど同感できないという現実もあります。

世の中の主流には反するかもしれませんが、あえて、去勢手術を推奨しない立場でそれらについて、書いてみたいと思います。

去勢手術のメリットに対する異論、デメリット

では、最初に書いた去勢手術のメリットと言われることに対しての異論をまずは書いてみたいと思います。

「犬の不要な繁殖を防ぐ」は確かであるが、現在の日本では・・・

正直なところ、これについては全く異論はありません。

去勢手術によって、オスの生殖能力がなくなるのは確かです。したがって、矯正手術の大きな、そして唯一のメリットは、この「犬の不要な繁殖を防ぐ」ことだと思います。

しかし、現在これが実質的な飼い主のメリットになるのか、については疑問があります。

ひと昔、というよりふた昔以上前は、犬を飼うのは外で飼うのが当たり前の時代でした。

犬は外で鎖につながれて犬小屋を与えられ、番犬として飼われるというのがごく普通の飼われ方でした。

同時に、まだ街中でも野良犬がいた字で委でもあり、放し飼いにされている飼い犬も見られた時代です。

その時代、外で飼われている犬は、そういった外で自由にしている野良犬や放し飼いにされている犬と接触する機会も多くそれによってメス犬が妊娠してしまう、ということも少なくありませんでした。

したがって、オス犬を去勢する、生殖能力をなくしてしまう、ということは社会的にも意義のあることだったと思います。

しかし、現在の日本では一部の地方を除いては、野良犬を見ることはほとんどないでしょう。特に都会と言われるようなところでは、全く野良犬なんかいない、といってもいいのではないでしょうか。

また、犬の飼い方自体も、現在は室内外が当たり前であり、外で飼われている犬はかなり少数派になっています。

ペット・トライアングルでも、たとえ大型犬であっても犬は室内で飼うべき、番犬として犬を飼うべきではない、と主張していますが、現実的にはほぼそうなってきていると思われます。一部ではまだ外で飼われている犬も見かけますが。

したがって、ペットとして飼われている犬が他の犬と接触して妊娠させる、妊娠させられてしまう、という機会は、ほぼないと言っていいでしょう。

よって、普通の飼い主にとっては、この「犬の不要な繁殖を防ぐ」ということはほとんど考える必要がない、と言ってもいいでしょう。

ただし、犬を多頭飼いしている場合で、オスとメスの両方を飼っている場合は、別です。この場合は、それが例え親子、兄弟姉妹だったとしても、交配してしまうリスクはあるので、念のためオスを去勢するというメリットはあるかもしれません。

でもその場合でも、適切に飼い主が管理していれば、そういうことは防げるとは思います。それでも念のためということは、このケースでは理解できます。

こういった、オスとメスを多頭飼いしている場合は、確かに「犬の不要な繁殖を防ぐ」という目的での去勢には意味があるでしょう。しかし、それ以外のケースでは、あえて「犬の不要な繁殖を防ぐ」という目的での去勢をする必要は全くないと言ってもいいでしょう。

そして、不要な繁殖を防ぐ、ということを社会的な問題として考えるとしても、去勢・避妊手術に頼る時代ではなく、人間の管理によって考えるべきではないかと僕たちは考えます。

「精巣腫瘍などの生殖器関連の疾患を予防する。」が去勢によってリスクの上がる疾病も・・・

上記の通り、現在は繁殖を防ぐという目的は事実上主要な目的とは言えなくなってきましたが、最近は病気の予防面でのメリットが盛んに言われています。

精巣腫瘍や前立腺肥大など生殖機能にかかわる疾病、疾患を防ぐ、というものです。これも確かにその通りでしょう。睾丸を取り除いてしまうので、それに関する疾患は起こりようがなくなってしまいますからね。

その意味ではこのメリットは確かに正しいと思います。

ただし、去勢することによって他の疾病、疾患が増えることはないのか、当点にも注意を払う必要があるのではないでしょうか。

去勢することによって、一般的にホルモンバランスが崩れると言われています。それによって、冒頭に書いた去勢のメリットの3番目のメリットが生まれてくるわけですが、ホルモンバランスが崩れること自体の問題はないのでしょうか。

はっきりとした因果関係は分かっていないようですが、一般的に多く見られるのが、去勢・避妊手術を受けた犬はと肥満しやすくなる、ということです。

これは多くの飼い主さんが感じていることで、ほぼその傾向があることは間違いないようです。

肥満は犬にとっても健康上良いことではありません。糖尿病などの原因にもなりかねず、また心臓などの主要な臓器への負担も大きくなり、それらの臓器、特に心臓にかかわる疾患へのリスクは高くなるでしょう。

また体重が増えることによって、足腰の関節への負担も増えることになります。

特に大型犬の場合、体重の増加は膝や股関節への負担から疾患になる大きな要因ともなり得ます。

実際に次のように検索するとそれに関する調査事例などが紹介されています。

▼グーグルで「去勢 股関節形成不全」を検索すると

要するに、去勢することによって減らせる疾患は確かにあるけど、同時に去勢することによって発生しやすくなる疾患もある、ということを忘れてはいけないのです。

オスの体から睾丸を摘出する、ということは本来ある自然な体を壊すことになります。したがって、それに対しての代償は当然あると考えるのが素直ではないでしょうか。

また、実際にある有名な動物病院の獣医師さんも、こんなことを言っていました。

「去勢や避妊手術をしたからと言って、必ずしもその犬の健康に貢献するわけではない。去勢することによる健康面での悪影響が大きくなる場合も少なくない。リスクが少ないとはいえ手術なので確実にリスクはあるし。ただ、普通の動物病院では去勢・避妊手術はリスクの少ない収入源としてやってほしい手術であることは間違いないだろう。そして、なるべく自分の病院でやってもらうために早期に行うことを勧めているのが実際のところだ。」と。

同時におっしゃっていたのは、去勢・避妊手術を行うべき時期についてです。

「とはいえ、多頭飼いでは、去勢・避妊手術が有効なケースもあるだろう。ただし、実際に手術を行う時期は、本来は生後1年以上、大型犬では生後2年以上経過してから、つまり体がしっかりと成長してから行うべきである。子犬のうちの全身麻酔は、それ自体にリスクがある上に成長過程での手術はより犬の体に悪影響を及ぼすリスクが高くなる。だから、本来は手術をするにしても、犬の体が完全に成犬の体になってからするべきである」と。

つまり、犬の健康面を考えたら、去勢手術をする時期は、一般に言われている生後6か月~1年未満ではなく、犬の体がしっかりと成長してからするべき、ということである。

一般的に言われていることとは、全く違う意見だけど、僕にはこの意見の方が理解しやすい。どう考えるかは、その人次第ですが・・・。

「攻撃的な行動、マーキングなど犬の問題行動を抑制する。」は99%期待できない・・・

これもよく言われている去勢のメリットです。僕も訓練士になる前はそれを頼りたいという気持ちで、攻撃的な傾向を持つ犬の飼い主さんには、「去勢を試してみてもいいかもしれませんよ」、的なことを言っていました。

しかし、結果としてそれらの攻撃的な行動が改善されたことは全くありませんでした。

マーキングについても全く同じです。

もしかしたら、世の中には去勢によって、そういった攻撃的な行動やマーキングが改善される犬もいるのかもしれません。

でも、それを目的に去勢をすると期待外れになってしまうことがほとんどのようです。

したがって、それを踏まえたうえでかすかな期待で行うのであればいいでしょうけど、大きな期待をもって去勢を行うのはやめた方がいいでしょう。

最初に書いた去勢するメリットの1番目である「不要な繁殖を防げる。」は、その現在での必要性はともかく間違いではありません。

2番目の「精巣腫瘍などの生殖器関連の疾患を予防する」、これもそれ自体は間違いではありません。ただし、逆に去勢することによる健康面でのデメリットもあるのでそこをどう考えるか、ということです。

そして、この「攻撃的な行動、マーキングなど犬の問題行動を抑制する。」、については少なくとも知っている限りではそれに反する犬が100%ですが、世の中にはそうなった犬もいるようなので、あえて100%間違いとは言いません。が、おそらく99%ぐらいはその期待を裏切るだろう、と思っています。

「攻撃的な行動、マーキングなど犬の問題行動を抑制する。」ということを目的にするのであれば、それは適切な飼い方、そしてしつけ方、しつけトレーニングによって改善すべきであります。

そうすれば、90%ぐらいの犬は改善できると思います。残念ながら100%ではありません。改善できない10%の犬は、極度に強い噛み癖のついた犬、特に柴犬やコーギーは、僕には不可能な場合もあると思っています。ただし、以前NHKで紹介されペット・トライアングルでも「犬に体罰は絶対NGなのは当たり前!でも・・・」のところで紹介している「中村訓練士」なら出来るかもしれませんが・・・。

犬の問題行動はまずは適切な飼い方しつけ方、特に適切なしつけトレーニングで忍耐強く治すことが最も確実です。決して、去勢手術に期待してはいけないと思います。

犬の去勢手術、するかしないかは飼い主さんの判断です。

当たり前の話ですが、犬は自分で去勢手術を受けるかどうか決めることはできません。が、もし犬が自分で決められるとしたら、あえて去勢手術を受けることを希望する犬はまずいないのではないでしょうか。

ただし、もちろん結果的に去勢手術をすることが犬のためである、というケースがあることも否定はしません。

しかし、必ずしも去勢手術をする必要がない犬もいる、というよりは一般的には、あえて去勢手術をする必要がない犬の方が多いだろう、と思います。

メリットがあるのは、オスとメスの両方を多頭飼いしている場合のみです。

健康面でのメリットもあることは確かですが、同時に去勢手術をすることによる健康上のデメリット、リスクがあることも確かなのです。

そして問題行動を目的としての去勢手術はほとんど改善は期待できないことを承知の上で行うかどうか、検討すべきでしょう。

去勢手術をするかしないかは、飼い主さんの判断次第です。いろいろと知らべ、そのメリットとデメリット、リスクを理解したうえで、やはりした方が良いとの判断であれば、そうはそれでいいと思います。

でも単にいろいろなところで言われているから、また獣医師から勧められたから、という理由で判断するのはやめることを僕は勧めます。

本来獣医師は、僕ら犬の飼い主にとっては神様のような存在であることは確かです。しかし、実は神様ではない、悪魔だった、というと怒られるかもしれませが、実際にそう例えてもいいような獣医師がいるのも、残念ながら確かなのです。

このページの途中でも紹介したある僕らが信頼する獣医師の言葉をもう一度紹介しておきます。

とある獣医師の去勢・避妊に関する意見

「去勢や避妊手術をしたからと言って、必ずしもその犬の健康に貢献するわけではない。去勢や避妊手術することによる健康面での悪影響が大きくなる場合も少なくない。リスクが少ないとはいえ手術なので確実にリスクはあるし。ただ、普通の動物病院では去勢・避妊手術はリスクの少ない収入源としてやってほしい手術であることは間違いないだろう。そして、なるべく自分の病院でやってもらうために早期に行うことを勧めているのが実際のところだ。とはいえ、多頭飼いでは、去勢・避妊手術が有効なケースもあるだろう。ただし、実際に手術を行う時期は、本来は生後1年以上、大型犬では生後2年以上経過してから、つまり体がしっかりと成長してから行うべきである。子犬のうちの全身麻酔は、それ自体にリスクがある上に成長過程での手術はより犬の体に悪影響を及ぼすリスクが高くなる。だから、本来は手術をするにしても、犬の体が完全に成犬の体になってからするべきである」

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