最近の犬の血統書はまともになっているのだろうけど

以前、「犬の血統書は飼い主に必要か?」という記事を書いた。また同じことを書いてしまいそうである。でも、最近保護犬の問題などの記事を見たりしたときに感じることことがあり、またこの犬の血統書について考えてみたい。

もしかしたら、血統書に価値がある、と感じる人も多いことが、保護犬などの飼い主探しに影響があるのではないか、そんな風にも考えてしまうときがあるのである。

純血種という犬には、血統書が付いているのが当たり前、なのかもしれない。

なぜ血統書は必要なのか?

それは、血統書がその犬が純血種であるということを証明する証拠であるから、ということだろう。

確かに、血統書を見れば、その犬の父犬、母犬、そしてその父犬、母犬の父犬、母犬、つまりもとの犬から見れば、祖父、祖母などの犬がすべて掲載されていて、その犬がまぎれもなくその犬種であること、つまり雑種ではないこと、がわかる、ということになる。

僕らが子犬のネットペットショップとしてこのペット・トライアングルのサイトを立ち上げたころ(2004年~)、いろいろなブリーダーを訪問して話を聞いた時の印象は、血統書っていい加減なものもけっこうあるんだな、という印象でした。

中型犬や大型犬を1犬種、もしくは2~3犬種を専門にしているブリーダーは比較的、まともに血統書を申請しているブリーダーが多いとは思いましたが、いろいろな犬種を繁殖しているブリーダーや小型の人気愛玩犬系の犬種を扱っているブリーダーはけっこういい加減に血統書を申請しているという事実を知り、驚いたものでした。

基本的に、血統書の申請はブリーダーが行うので、当時はある程度はブリーダーの思うがままに血統書の申請ができたのです。

従って、子犬が産まれたら、実際の親犬とは関係ない犬を親とした血統書を機械的に申請していたり、よくあるのがチャンピオンの実績のある犬を親犬として登録する、というものでした。

チャンピオン犬の子供は、価格を高くすることが出来ますからね。

また、親犬は間違いなく申請しているものの、生まれた年月日、つまり子犬の誕生日を売りやすくするように変えて申請している、なんてブリーダーもけっこういましたからね。

例えば、大型犬であれば、子犬でも大きな方が売りやすいので、実際には生後3か月以上の子犬なのに、生後2か月未満になるような生年月日を申請している、など。

でも、その後、犬の世界でもDNAによる登録というものが行われるようになり、それまでのような悪質な虚偽の血統書申請は、現在はかなり減っていると推測できるだろう。

特に、日本で最も大きな犬の血統書発行団体であるJKCでは、交配したオス犬のDNA登録がされていることが義務化されている。また、メス犬でもチャンピオン犬の場合は、DNA登録が必要となっている。

従って、少なくとも、検査をすれば、その犬の血統書に記載されている父犬が本当にその犬なのか、確認することが出来るのだ。

普通の犬が母犬の場合は、母犬の確認はできないが、母犬がチャンピオン犬なら、両親犬ともDNA検査によって、確認することも出来る。

ただし、そこまでやろうとする一般的な犬の飼い主がいるかどうか、いてもそう多くはないように思う。

そうは言っても、こういった登録団体側の努力から、現在は、以前のようにブリーダーが都合のいいようにいい加減な血統書の申請は出来にくくなっているので、いい加減んな血統書もかなり少なくなっていると思われるのである。

ただし、生年月日に関しては、あくまでもブリーダーの申請によるものなので、そこはブリーダーを信用するしかないのだが・・・。

また、kcジャパンという血統書発行団体では、血統書の申請にDNA登録は必要ないので、もし愛犬の血統書がkcジャパンの場合は、あくまでもブリーダーの申請を信用するしかない、ということになる。

ただ、kcジャパンがいい加減な団体と言うわけではない。僕も、以前kcジャパンの会長(だったかな?役職のトップの方)にブリーダーの紹介などでお世話になったことがあり、kcジャパンの犬の展覧会のお手伝いをしたことが何回かあるのだが、当時の会長は、とても犬に対してまじめな方だった。正直、それまではkcジャパンにあまり良いイメージはなかったのだが、この会長とお会いしていろいろとお話をしてからは、kcジャパンがまじめな血統書発行団体だということがわかったのであった。おそらく、今もそうであろうと思う。

ただ、問題は申請するブリーダーなのである。

事実上、JKCには登録できないような場合、kcジャパンで血統書申請を行う、というケースも少なからずあるかもしれない。

また、JKCのサイトの「血統証明書とは」のページにも次のような記載がある。

血統証明書の登録申請は、クラブ会員である繁殖者とJKCとの信頼関係に基づいて行われます。

つまり、あくまでも血統書はブリーダーとの信用に置いて発行されるものなのである。だからこそ、血統書付きの犬を迎える場合は、どんなブリーダーのところで生まれた犬なのか、どんなブリーダーが繁殖して育てた犬なのか、ということが大事だと思うのである。

純血種の犬にとっては、血統書はその犬の血統を表す大事な証拠だということは間違いないのであるから。

でも、そもそも純血であることが、そんなに大事なことなのだろうか?そこに今、疑問を感じ始めるようになってしまった。

今のミックス犬人気が必ずしも良いとは思わないけれど

もともと現在ペットとして飼われている犬はすべて人間によって人間の都合のいいように作られた犬種である。

オーストラリアにはディンゴという野生の犬がいるようだが、それを除いては、世界的に見ても、野生の犬種は存在しない、と言っていいだろう。

つまり、犬という動物は長い人間との共同生活から、特に近年になって、人間が人間の理想とするような形に変えられてきたのである。

そのため、人間のいろいろな要望によって、大きさも、毛色も、形も同じ犬でも、他の動物には見られないような多種多様な種類が生まれてきたのである。

生まれてきたというよりは、人為的に作られてきた、と言っていいだろう。

そして、それぞれの犬種で理想とされるスタンダードが規定され、それに外れるような大きさや形、色の犬は、価値のない犬、とされることもあるのが現実である。

でもそれは、ごく一部の人間が勝手に決めた理想であり、それに合うか会わないかでその犬の価値を決めるのは、人間で言えば、まさに人種差別そのものではないだろうか。

もちろん、人間の人種の違いと犬の犬種の違いは全く違う。

人間の場合は、自然発生的にそれぞれの人種が発生してきたのに対して、犬は人為的に作られたものである。だからこそ、なおさらそれに合う合わないで、価値を決めるなんて、とんでもないことではないだろうか、と。

という自分も、以前は血統書付きを売りにして子犬を販売していた時期がある。その当時は、それが子犬を迎える方のためである、と言う思いで、少しでも信用できる血統書を申請してくれそうなブリーダーを探し、選んで、子犬を紹介していたのである。

でも、犬を売ること自体に疑問を感じ始め、10年ほど前から、飼われている犬と飼い主さんのためのドッグケアサービスを始めて、今に至っている。

そして最近は、犬は純血種であることが重要なのだろうか、ということに疑問を感じ始めている。

以前は、例えばボーダーコリーのような牧羊犬も、その形や色と言った外観ではなく、いかに牧羊犬として優れているか、という視点から、その犬が牧羊犬としての価値があるかどうかを見定められていた。

これは、人間で言えば、経営者としての能力がるか、また技術者としての能力があるか、などその仕事に対しての価値として認められるものである。

もちろん、その能力を判断する材料として犬種を見ている飼い主もいるだろう。だから、犬種の存在が必ずしも悪いとは思わない。

でも、ペットとして家族の一員として迎える犬は、純血である必要があるのだろうか、と最近思うようになってしまったのである。

同じ犬種でも、犬にはそれぞれ個性がある。その個性が面白いところでもあるのだ。ということは、犬種と言う垣根を外してしまえば、もっといろいろな犬に出会うことが出来る、ということではないだろうか。

最近のミックス犬人気の要因のひとつには、そんなこともあるのではないだろうか、と思う。

ただ、現実のミックス犬は、ブリーダーの都合で作られた面も多分にあるように思う。

前記のJKCのDNA登録の義務かなどにより、いい加減な血統書申請がしづらくなった。であれば、血統書の必要がない、ミックス犬を売ればいい、というような。

ミックス犬であれば、ある程度人気のあるような愛玩犬種を複数適当に飼っているだけでも、特に手間もなく子犬が産まれてくる。

少なくとも母犬の犬種はわかるので、子犬から適当な父犬の犬種を決めてやれば、例えばトイプーとチワワのミックス犬、と言って売ることが出来てしまう。

以前のように雑種とは言わずに、ミックス犬と言えば、なんとなく響きもいいし、買う側の人間の抵抗感もない。

というような背景を強く感じてしまうので、必ずしも現在のミックス犬人気を歓迎しきれないところはある。

でも、逆にこのミックス犬人気がきっかけで、血統書のあるなしでの犬の価値の違いというのが薄らいでくる、できればなくなるようになれば、それはそれでいいのだが。

本来はミックス犬にこそ、血統書が必要なのではないか

その犬に血統書が歩かないかでその犬の価値を決めるのは間違っていると思う。

しかし、血統書自体を否定しているわけではない。

正しい情報が記載されている血統書は、その犬の血筋を見ることで、遺伝的な疾患の可能性などを見るうえで大切な資料であることには間違いないだろう。

ということは、本来であれば、純血であるかないかにかかわらず、すべての犬に血統書があるべきではないだろうか。

そして、ミックス犬こそ、本来は血統書が必要だはないだろうか。

同じ犬種同士ではないからこそ、どんな親犬だったのか、どんな犬種の血が入っているのか、というのは健康面でもその犬の貴重な情報になるはずである。

血統書と言う名前がわるいのかもしれない。と言って、いい名前も浮かんでこないので、ここではとりあえず、血統書としておこう。

現在、人気があるとは言え、ミックス犬を迎えた場合、純血種のような血統書のように、その犬の親犬の情報、どこのブリーダーのところで生まれたのか、と言ったことを証明するようなものはない。

単に、ペットショップで表示されていている、またはペットショップで聞いた情報を信じるしかないのである。

でも、ミックス犬であれば、より両親がどんな犬だあるのか、という情報は、飼い主にとって役に立つのではないだろうか。

最近のミックス犬人気で、血統書の価値が以前よりも軽くなっては来ているのかもしれない。

でも、やはり血統書のあるなしで、犬の価値が判断されることも少なからずあるだろう。

そしてそれは、例えば保護犬を引き取る際のネガティブ要因にもなっているのではないだろうか。

ペットショップで純血種を購入すれば、ほとんどの場合、血統書が付いてくるだろう。でも、保護犬の場合、たとえ純血種だとしても血統書が付いてくるなんてことはほとんどないだろう。

血統書がないのであれば、純血種を飼う意味がない、と考える人も中にはいるのではないだろうか。

犬の血統書はブリーダーだけが持っていればいい

ヨーロッパなどでは、純血種でも一般の人が購入する場合は血統書が付いてこないらしい。

理由は、勝手に犬を繁殖しないようにするためと言われている。

日本でもそうした方が良いのではないだろうか。

飼い主が血統書を持っているメリットはほとんどないと言っていいだろう。

ブリーダーが持っていれば、その情報をブリーダーから聞けばいい話である。

実際に血統書を渡されても、名義変更をしない限りは、持ち主はブリーダーになっているだろうから。そして、あえて名義変更をする必要もないし、する人もそう多くはないだろう。

犬を引き渡したブリーダーがしっかりとその犬の血統書を管理していれば問題ないはずである。

でも、そなったらブリーダーは、販売した犬の血統書をすべて管理しなければいけなくなってしまうではないか、という意見もあるだろう。

また”でも”になってしまうが、でも、それでいいのではないだろうか。

犬を繁殖した人間には、それだけの責任がある、ということ、それぐらいの責任をもって、犬を繁殖するべきではないだろうか。

純血であるなしにかかわらず血統書を発行してマイクロチップと併用すれば・・・

血統書が犬の戸籍みたいなもの、というのであれば、血統書を純血種の証明としてのものではなく、純血である、ないにかかわらず、その犬の素性、つまり両親犬の情報、どこのブリーダーのところで生まれたかなどの情報を示す資料とするべきではないだろうか。

そして必ずマイクロチップにも併用してその情報を入力しておくものとすれば、よりその犬の素性がわかりやすくなるだろう。

そうすれば、たとえ保護犬としてどこかで保護されたとしても、マイクロチップによって、その犬がどこのブリーダーのところで生まれたか、また誰が飼い主であるのか、ということもすぐにわかるはずである。

例えば、ジャーマンシェパードは必ず、耳に刺青をすることになっている。それには賛否あるかもしれないが、それによってジャーマンシェパードの場合は、保護された時にどこのブリーダーの犬だったのかがわかるのである。

これは、本当に理想的な希望である。現実になることはほとんど期待してはいない。

でも、犬の血統書のあり方、マイクロチップの義務化とその入力内容などについては、より検討されても良いのではないだろうか。

そうすれば、個々の犬に対して責任のある人間がより明確になり、保護されるようになる犬も減るだろう。そして、保護された犬がもともとの飼い主に戻される、または新しい飼い主に巡り合えるチャンスも増えるのではないだろうか。

現時点では夢のようなことだけど、少しずつでも、そんな未来に近づいてほしいと願う。

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