犬をしつける、トレーニングをする時には、目的によってしつけ方は変わってきます。スポーツドッグとして競技で優勝させたい、ショードッグでチャンピオンにさせたい、と言った目的の場合は、そのための特別なトレーニングが必要で、専門のトレーナーが必要です。でも、普通に家庭で飼うペットとしてのしつけトレーニングは、それとは全く違い、そして誰にでも出来るのです。
家庭犬としての犬のしつけの考え方
警察犬によく使われるジャーマンシェパードなんかは、普通に家でしつけなんかできないんでしょ?
もちろん警察犬にしようと思ったら難しいだろうね。でも、ジャーマンシェパードを普通の家庭犬としてペットとして飼うんであれば、家出のしつけは簡単にできるよ。
そうなの?ジャーマンシェパードは訓練所に預けなくちゃいけない、っていうようなイメージがあるけど…。
家庭で飼うのであれば、むしろ訓練所で特別な訓練なんかさせない方がいいんだよ。警察犬にするためには、犬の本能をより強化することも必要だけど、家庭犬としてのしつけでは、犬の本能が出ないようにするのがひとつの目的だからね。
へぇ~、そんなんだ。
だから、家庭犬としてのしつけトレーニングは、ジャーマンシェパードでも、ボーダーコリーでも、トイプードルでも、地位だなチワワでも、犬種にかかわらず、全く同じようにしつけられるんだ。
なぜ、家庭犬専門の犬のしつけなのか?
優秀な警察犬にすることを目的とするトレーニング、あるいはアジリティーやディスク競技など優秀なスポーツドッグにすることを目的とするトレーニングは、犬の持つ野生の本能、能力を出来る限り引き出し、ある程度犬を自立させることを目的とします。
それに対して、家庭犬の場合は、出来る限り犬の持つ本能を抑えて、闘争心のない、人間に従順な犬に育てる、言い方を変えれば犬に自立させないようにすることが目的です。
したがって、警察犬や競技犬、あるいは展覧会を目的としたショードッグなどとは基本的な目的が違うので、飼育方法、訓練方法が違ってくるのです。
本来、警察犬協会公認訓練士としては、警察の嘱託犬を育てるのがひとつの仕事です。
しかし、例えば警察犬として代表的なジャーマンシェパードは、警察犬としての印象が強いがために、一般のご家庭で家庭犬として飼える犬、つまりペットとしての犬種とは認識されていない方が多いように思います。
でも実際に欧米では、ジャーマンシェパードはペットとして飼われる犬種として多くの国でNo.1なのです。当然日本でも、レトリーバー種と同じように、あるいはそれ以上によき家庭犬になれるのがジャーマンシェパードです。
ジャーマンシェパードは良き家庭犬になれる犬種だということをより広めたい、これも僕がドッグトレーナーになろうと思ったひとつの動機でもありました。
だから僕は家庭犬として飼われる犬として、どういうしつけをするべいか、ということにこだわっているのです。
そして、今までたくさんの子犬を送り出してきた経験から、今の社会で大切なのは、家族の一員として迎えられるいわゆるペットとしての家庭犬が、人間社会の中で、飼い主さんはもちろん、誰からも愛されるようにしっかりと育てられることが重要であると感じています。
だから、その手助けをしていくことが、社会にとっても、飼い主さんにとっても、またなんといっても普通の家庭に迎えられた犬たちにとっても重要だと考えています。
そうか、ジャーマンシェパードも普通に家で飼えるんだね。
もちろんさ、それに訓練性がいいから、躾けやすいし、とても家庭犬としても優秀なんだ。ただし、それもしっかりと家庭犬としてのしつけトレーニングをすれば、という条件付きだけどね。
フードやおもちゃを使うと本当の意味での犬のしつけにはならない?
人間が社会でのマナーを守って行動するときに、何か見返りを期待して行動するでしょうか?
そんな人はまずいない、と言っても良いのではないでしょうか。
犬のしつけは、犬が人間社会で問題なく人間と一緒に生活できるようなマナーを身に付けさせることではないかと思います。
だからこそ、これが出来たらフードやおやつなど食べ物をあげる、またはおもちゃであそばせてあげる、というようなご褒美を与えて犬に何かを教えるのは、しつけではない、と思うのです。
でも、以前は私も犬のしつけはフードなど食べ物をご褒美として与えながら教えるのが当たり前と思っていました。
なぜかというと、そうしなければ犬はしつけられない、犬のしつけはそれが当たり前、という固定観念があったからです。
でも犬に関わる仕事をして、フードをご褒美として与えなくても犬のしつけは簡単にできる、ということを知り食べ物をご褒美に与えるしつけ方法に違和感を感じるようになりました。
そして、食べ物をご褒美に与えるしつけ方法では犬の目的は食べ物を得ることにあり、家庭犬としての目的である犬の本能的な意識、行動をなくしていくのとは逆行している。
つまり、より犬の本能的な部分を刺激することになる、犬の資質、性格によっては攻撃的な犬になったり、より扱い難い犬になってしまうということがわかってきました。
もちろんプロの訓練士であれば、食べ物はきっかけとして使い、その後うまく犬を誘導していく、ということが出来る人もいるかもしれません。
しかし、私の知っている限りでは一般の方がフードを使ってしつけを行うと、結局、指示がなくても犬はオスワリして食べ物のご褒美をねだるようになる、フードがないと犬が言うことを聞かないということになっています。
犬のしつけが ”犬が人間社会で問題なく生活するためのマナーを身に付けさせること” であるならば、フードやおもちゃで犬の気をひいて犬に行動を促すのではなく、犬自身が何の見返りを期待することなく、その行動をするような教え方をするべきだと思うのです。
そしてそれが出来るのが、人間と犬とのしっかりとした主従関係と信頼関係を作ることにより、犬が自然に人間に従うようなしつけ方だと考えます。
だから、フードやおもちゃを使わない犬のしつけ方にこだわっているのです。
このサイトで書いているしつけ方法は、そういう意味で現時点ではその目的にあったベストなしつけ方法であり、かつどんな犬にも、そして誰にでも簡単に出来るしつけ方法だと考えています。
ただし、このしつけ方法も完全だと思っているわけではありません。
犬にリードでのショックを与えることが必要であり、そこがこのしつけ方法の難しい所にもなっている部分も最近感じています。
しかし、実際に行うとこれが適切に出来れば、リードでのショックは最初の2~3回のみでほとんどの場合、それ以降はリードでのショックはほとんど使わないでしつけられます。
だからもっと良いしつけ方法が見つかるまではこの方法で犬のしつけトレーニングを行う、という考え方です。
確かにフードやおやつでしつけた犬は、オスワリも何も言わなくても、自分からオスワリしておやつをねだるってよくあるわね。
それは人間が指示をしたからオスワリするんじゃなくて、オスワリがおやつをもらう手段だと学習してしまっているんだよ。
なるほどね。
だから、気の強い犬だと、吠えやすくなったり、攻撃的になったりすることもあるんだ。だから、フードやおやつを使わないしつけ方が必要なのさ。
犬から慕われるためには、犬のリーダーになることが必要。犬のしつけはそのための手段です
犬のしつけというと、何か犬に厳しく接するようで、抵抗がある飼い主さんも中にはいらっしゃるでしょうね。つい最近まで普通の人だった僕にもその気持ちはわかります。
だから、特に小型の愛玩犬に対しては、しつける必要はない、という考えもわからないではありません。
実際、小さな愛玩犬の場合はしつけなくても大きな問題はない場合も多いかもしれません。
でも愛犬を愛し、かわいいと思うのであれば、同時に、愛犬からも愛される存在になりたいと思うのではないでしょうか。
「だからしつけなんてしたら、犬に嫌われるからしつけをしたくない」、という方もいらっしゃるかもしれませんね。
でも実際には、愛犬から慕われる存在になるには、しつけることが必須となるのです。
犬にしっかりとこの人は頼りになる、信頼できる、この人と一緒にいれば安心だ、という風に思わるる、つまりリーダーだと認識されることが、犬に慕われる最強の条件といっても良いと思っています。
犬にとっては、撫でてくれるだけの人、食事を与えてくれるだけの人、散歩をしてくれるだけの人は決してリーダーとは認識してくれません。
もちろんファミリーであり、仲間であることは十分に認識してくれますが、リーダーと認識するかは別問題です。
むしろ、かわいがる、食事をくれる、散歩に連れて行ってくれるだけであれば、逆に犬が自分がリーダーだという意識になり、それが犬の成長とともにどんどん強くなって、結局、犬は自分が絶対的なリーダーであり、周りの人間は自分より弱い、リーダーたる自分(犬)が守るべき仲間(人間)である、というように考えて行動するようになるでしょう。
犬に人間を守るような意識を持たせない、犬に慕われる存在になるためにも、犬との主従関係と信頼関係を作るしつけは必須なのです。
「ダメ!」、「いけない!」、「NO!」といって叱っているという方もいらっしゃるかもしれません。しかし、犬はそれらの言葉の意味を理解できません。
むしろ、女性の方や子供の甲高い声でそれらを言えば、犬は喜んでいると勘違いして、余計その行動を助長させるかもしれません。
したがって、そうなってしまったら、飼い主さんの立場は、犬にとっては愛すべき、また慕うべき対象ではなく、自分の下に位置する、自分の世話をする役目を持った仲間であり、だからこそ自分が守るべき対象となってしまいます。
室内や庭で放し飼いになっていれば、よりその意識は強力になっていくでしょう。
その結果、自分の家族、仲間をリーダーたる自分が守らなくてはならない、という本能のもとに、吠える、攻撃的となる、などの問題が発生します。
そして、仲間を守るために犬は自分たちのテリトリー(家)に近づいてくる人や動物に、常にアンテナをはり、神経を尖らせ、常時ストレスにさらされながらゆっくる休む時間もなく、心身ともに落ち着いた生活は生涯できなくなってしまいます。
一緒に暮らす人間だけでなく、犬にとっても、決して楽しい生活ではないでしょう。
では、犬に愛され、慕われる存在になるにはどうすればよいか?
最初に書いたとおり、犬のリーダーとして認識されることです。
確かに犬のしつけをすると、犬に嫌われるんじゃないか、って思っている人も多いみたいね。
そうなんだよ。でも、実際には全く逆なんだ。実際にこのしつけ方法をやってみるとわかるんだけど、このしつけをやると、犬はべったりとくっついてくるようになるんだ。
つまり、しっかりしつけをすることによって、犬は飼い主さんが信頼できるとわかって、慕って来るようになるのね。
犬との主従関係と信頼関係を作れば、犬からリーダーと認められる、犬のしつけが成功する!
では、どうすれば犬にリーダーと認識されるか?
犬にリーダーとして認識されるためには、飼い主が自分を守ってくれる強い存在だということ、同時に、自分を優しく包んでくれる愛情を持った存在であること、を教えていけばよいのです。
つまりそれが、犬との主従関係と信頼関係を構築する、ということになるのです。
実際に家庭犬トレーニングを行ってみるとわかると思うのですが、この主従関係と信頼関係を作っていくトレーニングを始めると、犬は擦り寄ってくるようになります。
もちろん、強さだけを犬に向けていれば、犬にとって飼い主は怖いだけの存在になってしまうかもしれません。
でも、強さと同時に優しい愛情を伝えていけば、犬にとっては、絶対的なリーダーとしての存在と認識されるようになってきます。
具体的な方法については、次ページ以降で説明しますが、まずはこの点をよくご理解いただくことが必要だと考えています。
犬はリーダーに従うことをうれしく感じます。
リーダーとコミュニケーションを取れることに喜びを感じます。
そして、リーダーと一緒にいれば、安心して休むこともできます。
主従関係というとなんか人間が偉そうに聞こえてしまうかもしれませんが、犬に飼い主さんが信頼し頼れる存在だと認識してもらうことが、一緒に暮らす人間と犬の両方が楽しい生活を送るための一番の基礎となるのです。
犬のしつけをすることは、決して犬にとって迷惑なことではありません。犬に嫌われることでもありません。
まったく逆です。
犬にしつけを入れてあげないことのほうが、犬を不幸せにすることなのです。
周りに迷惑をかけないということはもちろんですが、犬自身が安心してストレスなく、楽しく生活できるようにしてあげるためにも、犬にしつけを入れることは必要だと僕は思っています。
次ページ以降で説明していくペット・トライアングルの家庭犬トレーニング方法はその目的のために現時点で最も良い方法だと確信しています。
このしつけ方法を確立していく中で、数あるしつけDVDの中で唯一、とても参考になったDVDがあります。
言葉や考え方に若干の違いはあるものの、フードを使わない、という考え方で、実際の方法も同じです。
自分で犬のしつけを行おうという飼い主さんには、このDVDもとても参考になると思いますのでご紹介しておきます。
数あるしつけ方の中で、僕たちが唯一参考にした、しつけDVDです。
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★森田式犬のしつけ方法とは?
▼本格的に犬のしつけをしたい、という方には⇒「イヌバーシティ」
▼噛み癖でお困りの方には⇒「噛み犬のしつけに重点的に取り組んできたカリスマトレーナーのしつけ法」
では、実際にどうやってしつけていくのか、教えてもらいましょうか。
そうだね。次のページで、具体的にどうやってしつけていくのか、書いてあるので見てほしと思います。
実際にトレーニングをしている動画もいくつかあるみたいね。
そうなんだ。それを見るとよりしつけ方もわかりやすいし、実際に犬がトレーニングで変わっていく様子もわかると思うんだ。
次のページは 犬のリーダーになる方法
前のページは 犬をしつける心構え
▼ドッグトレーナーが選んだ目的別犬のしつけ教材ベスト3!
- しつけだけではない、犬を飼うに際して必要なことなど、全ての犬の飼い主さんに見てほしい⇒「イヌバーシティ」
- 早く確実にしつけをしたい方には、「ダメ犬しつけ王選手権全種目1位」の⇒「森田誠の愛犬と豊かに暮らすためのしつけ法」
- 愛犬の、「噛む」、「うなる」、「吠える」、でお困りの方には⇒噛み犬のしつけに重点的に取り組んできたカリスマトレーナーのしつけ法
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