世の中、情報は常に新しいものが発信されるけど・・・
最近見た犬関連の記事に、犬に関する情報は最新の情報が正しい情報だ、というようなニュアンスのことが書いてありました。同時に、獣医師が書いたとされる情報であれば信じていい、というようなニュアンスのことも書いてありました。
これに対して、僕はすごく違和感を感じました。
最新の情報が正しい、専門の知識を持っている人の主張が正しい、というのは科学分野によっては信じられそうな気はしますが、少なくとも犬の飼い方や、しつけ方に関しては、必ずしもそうではないと僕は個人的に思っています。
とりあえず、獣医師の書いたものはすべて正しい的なことに関する反論は、次の機会にして、このページでは最新の情報がすべて正しいということに関して疑問を投げかけたいと思います。
今の世の中、いろいろなことが大学などの研究機関でかなり細かく研究されています。
そして、その結果が専門誌や学会誌などに発表され、まずは学者さんや犬であれば獣医さんなどがその情報を得ることになります。
その後、その情報がネットや雑誌などを通して、我々一般人にも流れてきます。
そんな中には新しい発見的な情報、今までの常識を覆すような情報もあるでしょう。もちろん、犬に関しても。
でも、特に犬に関するそういった情報は、複数の犬や人を使って行う実験から、ほとんどの場合統計的に結果がまとめられ、その結果から研究者の方々が、そのような結果になった仮説を立て、それを発表する、ということだと思います。
犬に関する、特に行動に関しての情報では、実験に使われた犬の100%が同じ結果になる、ということは今まで見てきた情報の中には全くなかったと思います。
あくまでも一定以上の割合の犬が、こういうことに対して、同じような行動をしたから、という統計的な結果に基づいて、なぜそのような行動を取ったのか、ということを研究者が推測し、仮説を立てる、ということになります。
したがって、まず実験結果のところで一定割合で、その仮説に合わない犬がいる、ということ、また仮説自体もその研究者の独自の理解によって立てられるもの、という不安定な要素がいくつかある中で成り立っています。
その結果、実験条件によっては、また研究者の経験や知識によっては、必ずしも正しい方向へ導く結果にはならないこともあると思います。
つまり、最新の考え方だから、必ずしも正しい、もしくはその時点で最も信頼性がある、とは言えない、ということです。
人間の教育でさえ、失敗している
例えば、人間で言えば教育が犬のしつけに相当すると思いますが、人間の教育でも良しとされて導入された教育方法が、結果的にダメだったということで修正された例が最近もありますよね。
教育勅語がどうのこうの、っていう話題もありましたが、そこまで古くなくても、例えば「ゆとり教育」です。
一時は、義務教育でも「ゆとり教育」の考え方に基づいて授業の時間、方法、指導方法などが大幅に見直されました。
しかし、結果としてその「ゆとり教育」を受けた世代の実態がよろしくない、ということで今度は「脱ゆとり教育」に戻ってきました。
もちろん、中には「ゆとり教育」によって能力を伸ばした人もいるかもしれません。でも、全体としては失敗だった、ということでしょう。
国を挙げた人間の教育でさえこのような結果になるのです。
それでも「ゆとり教育」も専門知識を持たれた学者さんたちが慎重に議論を重ねた末に導入されたものと思います。
また、対象が子供とはいえ、教育を受ける子供たちの考え方を意見として調査したりもしたでしょう。
でも、結果としては失敗という判断になったと言っていいでしょう。
言葉をして、自分の考えをある程度は正確に伝えられる人間の子供たちを対象とした教育でもこんな感じです。
ましてや自分の気持ちや考えを伝えられない犬、人間が勝手に気持ちを推測しているだけの犬に関しての、飼い方、しつけ方に関していえば、もっと精度は悪いだろう、というのが容易に推測できるのではないでしょうか。
もっともこういった失敗を重ねる試行錯誤で、物事は進歩していくともいえるのですが。
決して、そういった研究が意味がないとは言っていません。もっともっと研究するべきだと思います。
でも、そこで得られた結果から発表されるものが、必ずしも古い考え方に対して優れている、とは限らない、ということです。
ましてや、犬に関してのことについては。
全ての主張には賛否両論がある
それに加えて、ある発表がされたとしても、ほとんどの場合、学者さや研究者などのそれに関する専門知識を持った人たちの間でも、必ずしも全ての人がその結果を支持するとは限りません。
むしろ、その結果に基づいた仮説に反論するグループも必ずいるでしょう。
例えば、最近ダイエットで話題の「糖質制限」です。
今、「糖質制限」推進派、と「糖質制限」反対派が激しく自分たちの主張に基づいた実験結果やそれに基づく主張をお互いが繰り広げています。(参考:糖質制限の賛否両論、さらにヒートアップ?)
それぞれの陣営がその分野の専門家です。
それでも、かたや「糖質制限は寿命を縮める」と主張して、もう一方は「糖質制限が寿命を延ばす」と両者の主張は全く対立するものとなっています。
一般人である僕たちは、どちらを信じればいいのか?
それは、両者の主張を聞いたうえで、それぞれの人が納得できる方を信じる、ということしかできないでしょう。
でも、これはほとんどの考え方が似たり寄ったりではないかと思います。
特に犬に関しての飼い方、しつけ方に関してはそうではないでしょうか。
いろいろなしつけ方を調べたり実践したりした上で、自分が最も理論的に共感できる、実際に結果が出たものを信じるしかないでしょう。
犬の飼い方・しつけ方は、最新か古いかではなく、自分が納得できる、共感できる方法を
そして、僕らドッグトレーナーの立場では、その自分が最も理論的に正しいと判断して、実際に結果を出せているしつけ方法を一般の飼い主さんに情報提供していきます。
ただし僕は、犬の飼い方、しつけ方に関して、絶対的に正しい、というものはないとも思っています。
結果として、問題なく犬が飼えるようになる飼い方、しつけ方はその犬にとって正しいしつけ方、だと思っています。
そして、その時に何を正しいと判断するかも、人によって違うかもしれません。
ペット・トライアングルでは、フードを使ったしつけ方法を適切ではないと主張しています。
でも、ドッグトレーナーの中にはフードを使ってしつけをすることを推奨している人もいます。
例えば、オスワリを教えるときに、フードを使っても教えることはできます。
そして、フードを使わなくても教えることが出来ます。
オスワリが出来るようになる、ということでは結果は同じです。
両方ともオスワリを教える、という目的では成功しています。
でも、僕らは、その時の犬の意識を、フードを使うと犬はフードを得るためにオスワリしているという仮説を立てています。
その仮説からフードを与えるしつけ方にいろいろと悪い面がある、と考えているのです。
でも、フードを使った方が簡単にオスワリを教えられるという考え方の人もいるでしょう。
しつけ方を選ぶときに何を重要視するか、それは実際に教える飼い主さんが選択することです。
もちろん、僕らはフードを使わない方法を選択してもらえるように主張しています。
でも、最終的には飼い主さんの判断です。
また、しつけをする時にペット・トライアングルでは、人間と犬との人間が主となる主従関係と信頼関係を重視しています。
それに対して、最近の研究では主従関係なんて古い、ということを書かれていることもあります。
でも、それらは新しいからと言って、正しいとは僕は思いません。
犬を迎えて、しつけで困っている方、悩んでいる方は少なくないと思います。
そういう方には、単に新しい考え方だから正しいとか、これは古い考え方だからダメだ、という判断の仕方ではなく、いろいろな飼い方、しつけ方を調べて、ご自身が一番納得がいく、共感できる、という方法を選択、実行されることを強く推奨したいと思います。
犬の飼い方、しつけ方などの情報は、古いからダメ、最新の考え方だからそれが正しい、とは限らない、と僕は思います。
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